|
歯科医の間で評判の歯科技工士がいた。歯科技工士は、歯科医が患者からとった歯型をもとに義歯を作る職人。昼間は営業に回り、取れた仕事を夜にする。一つ一つがオーダーメードで、納期は至上命令。それが明日ということも。厳しい仕事だったが40年間続けた▼「いつの日か、親が自慢してくれる息子になりたかった。そんな思いが、辛い日を支えてもくれました」と(小関智弘著『仕事が人をつくる』岩波新書)。多くの人には知られなくとも、多くの人の役に立つ仕事を誇る職人魂。そして、地道な息子を誇りに思う親の存在に感銘した▼事を成し遂げるには、人知れず陰の苦闘があるもの。そうした時、「自分のことを知ってくれている」人がいれば、どれほど心丈夫であろうか▼日蓮大聖人は数多くの御手紙を残されている。それは、門下が何か事あるごとに、つらいことも、うれしいことも、何でも報告したことを表しているのではないだろうか。御書を繙くと、温かい師弟の絆が感じられてならない▼「すべてをわかってくれている人がいる――それだけで人は『生きゆく力』を得られるものです」と池田名誉会長。心を受け止めてくれる師匠や同志、家族がいる。私たちの心強き「財産」にほかならない。(申)
|